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バカイズム

バカこそ真実だ。センスのあるバカを目指します。「面白きこともなき世を面白く」をモットーに突き進め!”バカの中にある真理”を見い出すために。さあ!今日もゆけ!馬と鹿の合わさった人間ども!

虚空がネギをしょってきた

夕暮れ時を気取りながら



僕は帰り道を順調にかつ、恍惚に進んでいました。




僕の前を行くいかにも買い物してきたわよ風な
おばちゃんが、ネギを落としました。




咄嗟のことでした。





僕は、あ!と思い、声をかけようとしました。
・・・しかし、待て。これなんて声をかけよう。



「あの、落としましたよ」



いやいやそんな普通の回答じゃあ周囲の人に
笑われてしまう。もっと何かこう・・・




「おばさーん、落としてますよー」




いやいやおばさんだなんて見ず知らずの人に
言って、相手が怒ってしまったら元も子もない。
僕はただ静かにネギを落としたことをおばさんに
伝えたいのだ。ああ、だが!だが!僕は!





神様。お許し下さい。僕はあろうことか。
明らかに買い物をしてきたおばさん風のおばさんが
ネギを落としたことを伝えることにすら四苦八苦して
いる人間です。おお!これが!俺の!おこがましい!
これが!夕暮れを気取っていた僕の代償で!ネギは!
ネギはいつものようにネギで!ただ、そのネギが!
ネギがニュートンの魔力によって地面に落ちたことから
始まったこの取り留めのないストーリー!










なんてことだ!正に!今!








早くしろ。早くするんだ。ネギは僕を待っている
かもしれない。ネギは早く見つけてほしいのだ。
知らせてほしいのだ。今晩の食材になるであろう
ネギの幸せ。その幸せが破壊されようとしている。
おばさんに早く知らせなくては!この僕が!僕だ!






でも、なんて言う?なんて知らせれば?
ここは天下の大往生。何か僕が言葉を発すれば
みなの注目を買う。そんな大事な場面。そんな
場面では失敗は許されまい。おお!なんということだ!
アダムとイヴ!なんであんた方はセックスしちゃったの!














この心がネギに対してここまで思うということがあったか。
ないと誓え、ネギよ。間違えた。ないと誓え、心よ。
今この瞬間よりネギがまともに地面におばさんの買い物袋
から落ちるという場面を見ていなかったのだから。










閃いた。僕の中で何かがはじけ、閃いた。







「ネギ、落としましたよ」







これだー!爽快!なんだこの!爽快感は!
このセリフを待っていた!頭の中に思い浮かぶのを!
そうだ、事実を伝えればよいのだ!ネギはネギだ。
ネギという主語を入れることによって、ネギがネギ
たらんということをネギも自覚し、かつ、おばさん
がすぐさま先頭の「ネギ」という名詞に気づくだろう。











今!今だ!ゆけ!GO!男だろ!ええ!








頭の中で何度も反復した。シュミレーション上では
成功のはずだ。行く。行くぞ。俺。俺は。
やってやる。やってやるぜ。GO!GO!DO!DO!NOW!










うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!














「あの・・・」



















「あ、ネギ落としましたよ」
















Σ(゚Д゚)!















と、OLさんが敏速にそのネギを
拾って・・・ね・・・おばさんに・・・手渡した・・・










僕はその瞬間










そのOLさんを
















心の中で5回ほど殺したのだ。

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テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/11/06(月) 01:48:03|
  2. バカイズム的に考える
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